添乗員の時のお話です。
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孤独な添乗員
ツアー最終日、札幌で、昼間の3時間ほど、お客様自由行動っていう行程でした。
その間に個人で昼食取ってくださいね、って意味の自由行動です。
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札幌時計台やらいろいろと観光に出かけるお客様が多い中、バスの中に80歳ぐらいのおばあさんが一人でおられたので、「最終日ですから、お疲れになったでしょ。でも、札幌の街中も観光できるいい場所がたくさんありますよ。〇〇さん観光なさらないんですか？」ってお声がけしたんです。寂しそうにしてるお客様がいたら声をかけてあげるのも添乗員の仕事なんです。仕事っていうか僕の性格ですけど。
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「わたし脚が悪いから、ここで待ってるんです。」って。「でも3時間も待つのは長いですよね。お疲れでしたらバスで休んでもらってもいいですよ。ドライバーさんには言っておきますから。」「はい、ありがとね。」「ほんとは観光したいけどって気持ちはおありなんですか？」「うん、行きたいんだけど足が悪いからいいの。」
ここで、この人、本当は観光したいんだってのがわかったので、「わかりました。じゃあ、僕がおぶってあげますから、一緒に行きましょう！」「そんなん添乗員さんに悪いですよ。貴方も仕事があるでしょ？」「いえいえ、そんなん全然大丈夫です。」
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ってことで、二十歳の僕が、80歳のおばあさんをおぶって、大通公園やら、時計台やら、いろいろ歩きました。横断歩道をひとつとってみても、80歳の方の一人の横断は危ないから、僕がボディガードの代わりもしました。
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実を言うと、3時間ほとんど、おんぶして、人混みを歩き続けたので、ツアー最終日の疲れた仕事人としては、ほんとはけっこうきつかったんですけどね。
添乗員が1人のお客さんだけに優しくしたら、本来は、クレームが来たりするのですが、まさか80歳のおばあさんに優しくしても、クレーム言う人はいないだろうとも思いました。
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とにかくそのおばあさんは、楽しそうにしてくれて、「一生の思い出になりました。」とまで、言ってくださいました。もちろん僕は、当たり前のことをやったに過ぎないし、お金もらって仕事として添乗員やってるので、やって当たりまえのことだったんですよね。
あれから約30年。当時、80歳ぐらい、今ご生存かどうかわかりません。でも、もし亡くなる時に、あんな優しい添乗員さんに出逢えて楽しかった、って、もしかしたら思い出していただけるかもしれないし、本当にやりがいのある仕事だったなあ、と思います。
旅にはトラブルは付き物で、毎回いろんなトラブルが起こります。（例えば、エアーのチケットの枚数が足りないとか、ホテルのダブルブッキングとか）そのたびに添乗員がテンパっていては、心に余裕が無くなって、お客様に優しく出来なくなるんです。なので、心に余裕を持つことも添乗員の実力なんだと思います。二十歳でこういう経験が出来たことは素晴らしい人生です。
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その時の肩書は、公認の旅程管理主任者でツアーディレクター、二十歳。笑
ちなみに同い年だった同僚（元親友）は、お客様全員のパスポートを預かっていて、空港で落として失くすっていうミスをしてましたが、あれはその後どうなったんだろう？
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東京にいる上司の人が凄く素晴らしくて尊敬できる人だったので、添乗員もやりやすかったし、心に余裕を持っていろいろなトラブルに対処できたんだと思います。
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だって僕のデビューはいきなり沖縄だったのですが、沖縄なんて、その時が初めてだったんです。飛行機もセスナを除けば、初めてでした。それでも「気楽に行ってこい」っていう上司でした。
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それって、知らない人が聞いたら無責任って思うかもしれませんが、そうではなくて、ものすごく信頼してくれるんです。で、気を楽にしてくれて、その分、お客様に優しくしたり、任務をしっかりできるって感じでした。「添乗員は付添人だから」って言ってくれました。その言葉でどれだけ仕事がやりやすくなったかわからないほどです。野球の監督とかこういう人なら、選手はやりやすいだろうなあって思いました。今から思えば、その上司は、人間のタイプが今の新庄監督に似てたなあ。
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その上司も当時、まだ23歳。表向きのノリは体育会系ですが、実質は、いい面の体育会系だけを持った人で、器が凄くでかい人でした。八王子の暴走族出身て人だったので、もしかして凶暴で有名なスペクターか？と思いましたが、ヒロミさんの仲間か後輩だったのかもしれません。
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他にもたくさんお客様との素晴らしいエピソードあるんですけどね。
バスガイドさんやドライバーさんも優しくしてくれる人多かったです。二十歳だったから、皆さん年上の人ばかりでしたし。そういえば、雲仙の観光ホテルで、家を出て15歳で働いてる女の子いました。すごくかわいい女の子だったけど、ほとんど話すこともなかったですけどね。
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